24 - ミュータント


“音を食べる人”

 ウチの学校の音楽の先生はアルビノで、髪とか肌とかが真っ白なのに目だけがもの凄く赤い。そのうえ太陽の光でヤケドするとかで、外に出る時は何だか特殊なクリームとかファンデーションとか塗って、帽子をかぶって、手袋をはめて、場合によってはベールもかぶったり、とにかくいろいろ準備をしなければならない人なんだ。服だって夏でも長袖着てるぐらいだし。
 でも、<遠来>《ふぁーれん》中を探せば同じ様な組み合わせを持つ人は結構いる。それだけだったらナオ先生──オレたちはみんなこう呼んでる──の様に行政区の特殊衛生管理局に登録されたりなんかしない。
 管理局に登録されるのは、だいたいあまり例がない病気や体質の人だ。ナオ先生もそうで、特定の条件が揃うと回復する力が上がるんだそうだ。要するにケガをしても治るスピードが早いってことらしいんだけど、精霊が使う魔法みたいにみるみるうちに、あっという間に治るんじゃなくて、普通の人なら1ヶ月かかるケガが3週間かそこらで治るぐらいの早さになるって話だ。とりあえず、ちょっとしたケガなら1日あればあとかたもなく治せるらしい。

 ただその条件ってのがおもしろくって、ナオ先生が言うには“おいしい音楽”を聴くことなんだってさ。それがどんなのかって聞いたら、「基本的には僕が好きな曲」って言ってた。なんかよくあるいやし系の曲でもそこそこ効果は出るみたいなんだけど、それ以上に先生自身がその曲が好きかどうかが問題なんだって。
 何でそうなるのかって聞いたら、食べ物のすききらいに例えてた。ほら、すきなモノを食べてると気分がいいじゃん? だけどキライなモノを食べるときってイヤイヤだからあんまり食ってるって気がしないよな。だから好きな曲の方が回復しやすいんだって。
 その先生の言うオイシイ曲ってのはどんなのかって? ……それが前に聞かせてもらったことがあるんだけどさ、ノリがいいっつーかテンポが早くてハードっつーか、重いっつーか、ハラに響くっつーか、とにかくそのいやし系ってのとは全然逆だったよ。

 でもさ、演奏のうまいヘタにも左右されるって言うからさ、授業でオレたちのヘッタクソな歌や演奏なんか聞いてて平気なのかって聞いたんだよ。したらさ、何て言ったと思う? よっぽどヒドイのは流石にダメージくらうけど、そこまでヒドイのは滅多にないから大丈夫だって言うんだ。何か、さりげにキツイこと言ってるよな。
end
よんだよ


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 只今挑戦中あとがき?

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