“dragon's sleep”

 彼がそれを知ったのは、たまたま耳に入ったラジオのニュースからだった。
「ねえねえゲンさん、勝ったよ! T260G!」
「おう、よしよし、次も頼むぞ〜」
「何言ってんだ、あんなのに勝ったって実力とは言えねえよ。タイム、こんなオヤジにのせられるんじゃねえぞ」
「いいじゃねえか。見た目はポンコツでもかなりイケるぜ、こいつはよ」
「……だからってこんな子供にやらすのはマズイんじゃねえか?」
“……トリニティが……侵攻…………生……は……”
「子供じゃないやい、もう11なんだから!」
「子供だろーよ、11ってのは。大体ここに来る事自体が10年早い」
「そんなことないやい!」
“……第2…………によると……反乱の…………”
「どしたの? ゲンさん」
「ん? いや、別に」
 彼は首を振った。しかし、長い事忘れていたものを思い出させる単語が混じっていた様な気がして、無意識にラジオに耳を傾けてしまう。
“……しかし……住民まで…………殺……非難の……も……”
「でもタイム、闘機に出るのはいいけれど、賞金が出る事の意味は考えてね。そのお金はあなただけのものじゃないのだから」
「どうして?」
「このままこのメカを出場させてくつもりなら、そのお金で新しいパーツを買ってあげなきゃ。こまめなチューンアップは、勝ち続ける為に必要な事なのよ」
「ふーん」
“……一部…………疑問視する……あり……では……抗議……”
「おいおいママ、あんたまでけしかけてどーすんだよ」
「あら、だからってここにいる以上は遠ざけてはおけないじゃない?」
「そりゃそうだけどさ……」
“……繰り返……ワカツが……の…………よって壊滅……”
 彼は反射的に立ち上がり、思わずラジオを凝視した。しかしそれっきりラジオはノイズと共に沈黙してしまった。
「あーあ、やっぱもうダメじゃねえのか? ウンともスンとも言わねえぞ」
「しょうがないわねえ、でもこのデザインが気に入ってるんだけど」
「んなこと言ったって、メカはやっぱ機能と耐久性で選ばねえとダメだって」
「……ママ、1杯くれ」
「またツケで飲むつもり?」

 彼が生まれ育った故郷を飛び出したのは、もう随分昔の事だ。
 彼はワカツで生まれた。滅多に、それもワカツでしか生まれて来ないという“剣豪”の能力、たまたまその力を持っていた為に“特殊能力者”として登録され、行動を監視され未来まで限定された現実に嫌気がさして家出同然に飛び出した。
 幾つものリージョンを巡った。その殆どはトリニティの目が届きにくい辺境リージョンだ。その風体や名前からワカツの出身だというのはすぐにバレたが、それ以上の事は聞かれなかったので問題は無かった。まず間違い無く軍や情報部関係に入る事になる“剣豪”が、職も無くただそのヘンをぶらぶらしているとは考えられないというのもあっただろう。そうして、ボロに来たのは半年程前の事だった。
 捨てたも同然だった。2度と帰るつもりも無かった。
 なのに何故“壊滅”という言葉にこれ程の衝撃を受けているのか、それが彼にとって問題だった。








 確か“ゲンさんアンソロジー”に提出するつもりで打ち込んでたブツ。
 しかし何だかネタが被りそうな気がしたので結果的に実体験ネタで(ヘタクソな)マンガを描いて、そちらには提出した訳なんですが。
 その後続きを書こうとは思ったものの、どうにも書き進められずに放置こいてたら随分時間が経ってしまってどういう方向性にしようとしていたのか忘れてしまった……(喀血
 ってなワケでほぼお蔵入り状態。多分これからもそんな様なブツをこっちに放り込んで行く予定。
よんだよ


 junk yard