024.この手に掴めれるものは


“Shadow Servant”


「やはりこの辺りが限界だな」
 日が暮れて、徐々に視界が効かなくなりつつある森の状況にジルは言った。だが、ジャンヌは首を傾げる。
「限界って……まだ、森を抜けてすらいないぞ?」
「そうだな」
「まさか、野宿するつもりなのか?」
 頷くジルにジャンヌは聞き返すと、ジルは否定しなかった。
「それしかあるまい。それとも、お前は嫌なのか?」
「いや、ジルが来るまでずっとそんな感じだったから構わないが」
 あの奇妙な空間で修業している間は不思議な事に空腹を感じる事は無かったが、現実に戻るとそうはいかない。その度にジャンヌは森の動物を狩ったり木の実を採りながら凌いでいた。
「ならば問題無いだろう。悪いが、火をおこして貰えないか?」
「ああ。──いや、そうじゃなくてっ」
 ジャンヌは頼まれるまま火打ち石を取ろうとしたが、しかし肝心の聞きたい事を聞けてなかったので話を戻した。
「あなたは野宿をした事があるのか?」
「いいや、これが初めてになる」
 まさかと言うより案の定なその返答に、ジャンヌは脱力した。
「どうした?」
「……よくそんな事で私を見付けられたな……」
 しかも従者すら連れてなかった事が、ジャンヌにとって驚きだった。普通なら必ず連れている筈なのに、たった1人であの場所まで辿り着けたとは思いもしなかったからだ。
「だから言っただろう、腕輪の導きだと」
「だが、あなたは仮にも貴族だろう? よく咎められなかったな」
「俺がお前を探している事は誰も知らん。恐らくラ・イールやリシャール達は俺が城に戻ったと思っているだろうし、家の者達はイギリス軍と戦う為に動いていると思っているだろう」
「だけど私があの崖から落ちて、随分経っているんじゃなかったのか? 何かおかしい様な気がするんだが」
 そう言って疑いの目を向けるジャンヌに、ジルはため息を付くと言った。
「それも説明する。だがその前に火を点けるべきではないか?」
 話している間に、周囲を照らすのは頼りない月明かりだけになっていた。更に森からルーサーの守護が無くなった今、この季節本来の寒さが急速に広がり始めている。
「……分かった、後で聞こう。その代わり、ジルにも火の点け方を覚えてもらうからな」
 暗にどうせ知らないんだろうとでも言う様なジャンヌの口ぶりに、ジルは苦笑する。しかし実際知らない事に変わりないので、大人しく頷いた。
「そうだな、合わせて野宿の作法も教えて貰おうか」


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 只今挑戦中JEANNE D'ARC

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