“旅立ちのプレリュード(エレンの理由)”


 森を抜け、モニカを護り従うエレン達一行がポドールイに辿り着いた頃にはすっかり陽が傾いていた。更に追い討ちを掛ける様に雪が降り始め、今度は寒さという魔物が襲って来る。
 密やかに積もりゆく雪を踏み締めながら、一行は町を見下ろす高台にあるレオニード城を目指す。その間をうろつく狼共を追い払いながら、ようやく城の入口まで辿り着くと、城全体から滲み出る“妖気”の様なものを感じ、皆立ち止まった。
 ──何だろう……
 中でも、エレンは奇妙なまでの既視感にも捕われていた。更に、自分がここに来るのが早過ぎたのでは無いかという不安感。
「……無気味な所ですわね」
 エレンの背後でモニカが言った。それにトーマスが応える。
「レオニード伯は魔族の一員ですから当然かもしれません。ですが、仮にも聖王様の信を得ていた人物ですから、変に怖がる事も無いと思いますよ。……エレン?」
「……っ、何?」不意に呼ばれて、エレンは慌てて聞き返した。
「どうかしたのか?」そんなエレンにトーマスは何か懸念事でもあるのか、心配そうな顔をして聞いた。「何か、睨む様に見てたけど」
 しかし、エレンは首を振った。
「ううん、何でも無い」
 そして話題を変える様に先を促した。「そんな事より、早いとこ中に入ろう。このままじゃカゼひくわ」
「それがいい、それがいいよ」強力にユリアンが同意した。「こんなトコに長々といたら、ホントにカゼひく」
 そのセリフにトーマスは苦笑し、サラは頷き、モニカはくすくす笑いを洩らした。何となく、少しばかりほぐれた気分になった所で一行は門をくぐった。

 …………

 城の扉は、一行が呼び掛けるまでもなく勝手に開いた。
 中に入ると、ほの暗い空間がそこにあった。一行が進むのに合わせて、導く様に通路の燭台に勝手に火が灯されてゆく。
「……これって、一応、歓迎されてるのかな……」
 小さくユリアンが呟く。エレン達も似た様な事を思っていたので、それぞれに同意を示す。
 やがて広間に出た。その少し高くなった所に、豪奢な椅子に座った波打つ長い紅い髪の男の姿があった。一行は彼の前まで進み、更にモニカが1歩前に進み出て挨拶をする。
「初めまして、伯爵。ロアーヌ侯ミカエルの妹、モニカでございます」
「ようこそモニカ姫。噂通り、いや、噂以上に美しい方だ。もしかすると、あなたの祖先のヒルダ以上かも知れぬな」
 本気とも冗談とも付かない言葉にモニカはとりあえず一礼し、それから疑問を口にした。
「ひとつお聞かせ下さいませ。もしかして、私達が参るのをご存じだったのでしょうか?」
 その問いに、レオニードは笑みを浮かべた。
「ポドールイは山あいの町、それ故、何の楽しみもありません。特にこの季節は雪に閉ざされ元から少ない旅行者も更に減り、それでつい外の出来事が気になって、色々と噂話を集めてしまうのですよ」
 すると蝙蝠が現れ、軽くあげたレオニードの指に留まった。そして小さく鳴く。
「では、今回兄の身に降りかかった事件も聞いておいででしょう? 伯爵の御援助を、何卒よしなに」
「分かっております」
 レオニードは頷きはしたが、その先の言葉で急き込み気味なモニカをやんわりと抑えた。
「しかし、ミカエル候には私の援助など必要ではありませんよ。モニカ姫は、何も心配なさらずにこの城で寛いで戴きたい」
 そしてそう言い終わると同時に、何処からともなく青白い炎が現れた。
「では、これにお部屋まで案内させましょう」
 その言葉と同時に炎は右側の階段へと移動する。だが一行がそれに続こうとした時、レオニードは思い出した様に再び口を開いた。
「そう、1つだけ御注意申し上げておきましょう。この城はあちこち危険な所が御座います。お気を付け下さい、何せ吸血鬼の城ですからな」
 笑みさえ浮かべながらそう言うレオニードに、一行はそれぞれ顔を見合わせた。互いに互いの不安な顔が映る。ただエレンだけが、レオニードを凝視していた。
 そしてこの中での年長者として、トーマスが礼を言った。
「御忠告、有難う御座います」
 今度こそ炎が導く様に階段を下り、一行はそれについて行く。しかしエレンは階段の手前で立ち止まり、再びレオニードの方へと振り返った。
 そこにあるのは、初めてであるにも拘らず見覚えのある世界だった。
 レオニードが、面白そうに笑っていた。
「どうかなされたかな?」
 無表情に、エレンは返した。
「前に、会った事無いかしら?」
 変わらぬ笑みを浮かべたまま、レオニードは答えた。
「もしそうだとしても、思い出さぬ方が良いのでは無いかな? 吸血鬼と会った事があるとは、お前達人間にとって余り良い思い出とは言い難いと思うが」
「エレン?」
 降りて来ないエレンを気にしてか、廊下への入口からトーマスが顔を出した。
「……何でも無い」
 先に視線を外したのはエレンの方だった。そう返事するとエレンは踵を返し、階段を下りた。
 レオニードの膝の上で、黒猫が1つ鳴き声を上げた。

 …………

 その晩、エレンは悪夢にうなされた。
 それは朽ち果てた城塞を、まだ幼い自分が怪物共に追われて逃げ回ると言うものだった。もう1人、よく知っている“誰か”も一緒にいるのだが、どういう訳かエレンにはそれが誰なのか分からなかった。
 やがてテラスに追い詰められ、その“誰か”が月術で怪物共を一掃するのだが、その“誰か”もまた……


「……エレン!!」
 外界からの呼び掛けでエレンは目を覚ました。目を開けるとトーマスが自分の顔を覗き込んでいるのが目に入った。
 横たわったまままばたきをする。目に入る見慣れない天井、何故ここにトーマスがいるのか、それら全ての状況が呑み込めない。暫しの逡巡の後、ここが自分の家では無い事を思い出した。
 エレンは体を起こした。
「どうしたんだ? 随分うなされてたぞ」
 エレンは首を振った。
「──何だろう」寒気を感じる。かなり寝汗をかいたらしい。「……何か、子供の頃の夢を見た気がする」
 それを聞いて、トーマスは顎に手を当てた。
「うなされる程の事って、何かあったか?」
「分かんない」再びエレンは首を振った。「でも、そんな気がする」
 沈黙が降りる。不安を否定出来ないのは、この無気味な城の所為かもしれない。
 それでもやはり、先に口を開いたのはエレンの方だった。
「……そういえば、ユリアンはどうしたの? 確か2人でやってたんじゃなかった?」
「ああ、2時間交代でやる事にしたんだ。その方が明日に響かないし」
 4人が床に就いてすぐ、別に隣の部屋を与えられていたモニカがやはり1人では怖いと言ってこの部屋に来た為、トーマスの提案でユリアンと2人で見張りをする事になったのだった。しかしそれでもベッドは1つ空く訳で、この城に入る前にトーマス自身が言った様に無闇に怖がる必要も無い筈であり、故に無理に2人同時に起きている事も無い。
「やっぱそれ、あたしもやるわ」少し考えてから、エレンは言った。「その方がもっと楽になるでしょ」
「……流石に、それはマズいと思うぞ」
 トーマスは眉を顰めた。男の自分やユリアンはともかく、女のエレンにやらせるのは危険過ぎた。それも腕っぷしの問題では無い。ここが“男性の”吸血鬼の城であると言うのが問題なのだ。
 しかしエレンはそんな事さえ気に留めなかった。
「あたしなら大丈夫よ」妙に自信たっぷりにエレンは言った。「それにヘタに今また眠ろうとしても、悪夢の続き見そうだしさ」
 そしてエレンはベッドから降りるとトーマスが引っ掛けていた毛布を剥ぎ取り、暖炉の前の椅子へ向かう。椅子の上にはトーマスが読みかけていた本があり、エレンはそれを投げ渡した。それを受け取りながら、問答無用のエレンの行動にトーマスはため息をついた。こうなると、説得が効かないからだ。
「……仕方無いな、でも、何かあったらすぐ起こせよ」
「分かってるって。じゃ、おやすみ」
 苦笑しながら、仕方無しにトーマスはベッドに潜った。エレンはそれを確認すると、背もたれに体を預けた。
 見上げる天井は高く、暖炉の炎に照らされた自分の影が映し出されていた。それを眺めながら、エレンは悪夢の中身を思い出していた。
 夢であるにも拘らず、五感に訴える感覚は酷く生々しかった。積もったホコリの臭い、何処か冷たく湿気を孕んだ空気の感触、眼を刺す様な満月の光、そして現れた怪物共の鼻をつく臭い──それら全てがまるで実際に体験したかの様だった。だが、エレンの記憶にはあの場所そのものが無かった。
 エレンがシノンを、何よりロアーヌ地方を離れた事自体数える程しか無い。そして野山を駆け回っていた頃から今に至るまでの記憶を引っ掻き回しても、あの様な場所を見付けたと言う覚えは無い。大体、そこに一緒にいた人物だけが分からない事自体がおかしかった。これまでにシノンを離れた時の同行者はトーマスやユリアンだったり母親や父親だったりと、行く度に違ってはいるが間違っても1人という事は無い。後はせいぜい子供の頃に1・2回程、冒険者の叔父とキャンプがてらシノンの森のちょっと奥の方へ行った事があるぐらいで──…………
 ────あれ?
 はたと、そこでエレンはある事に思い当たった。冒険者のおじさん──古い記憶の中でよく覚えている出来事にはこの叔父の事が多いのに、何時頃からか登場していない事に今更ながら気が付いたのだ。
 ──じゃあ何で、このおじさんはいなくなったんだろう?
 昔はいた。確かにいた。エレンはこのステルバートという叔父が大好きで、余りの懐き様に“立場が無い”と言っては父親が肩を竦めていたのを覚えている。だが、今はいない。あれ程懐いていたにも拘らず、何故自分は彼がいなくなった時期も理由も覚えていないのだろう? もし死んでしまったのだとしたら、何故その事自体を知らないのだろう?
 エレンは顔を上げた。猫の鳴き声が聞こえた気がしたからだ。それに誘われる様にエレンは立ち上がると扉へと歩き、大きな音を立てない様に気をつけながら扉を開けた。
 そこにいたのは、黒猫を足下にまとわりつかせたレオニードだった。
 鳴き声は、その猫のものだった。
 エレンは、己の迂闊さに心の中で舌打ちした。
 レオニードが血の様に紅い唇を開く。
 ……しかしそこから流れ出た言葉は、エレンが予想したものとはまるで違っていた。
「……そろそろ、封印が解け始めた様だな」
 かなり不意を突かれたが、それでもエレンはこれだけ言った。
「──どういう事?」
「多くは言えぬ。ある者との約束が有るのでな」レオニードは言った。「だが、何れお前は知る事になる。お前の精神を護る為、我々がお前にした事を」
「何よそれ、あたしに一体何したの!?」
 掴み掛からんばかりの剣幕でエレンは言う。しかしレオニードは淡々と応えた。
「それも教えられない。全てはお前の記憶の向こう側に有る。だがもし自然と封印が解けた所で、今のお前ではまた同じ事を繰り返しかねない。……それでも、知りたいか?」
「当たり前じゃない、知らない処で何かされて操られるなんてゴメンだわ!」
 挑む様にエレンは言ったがしかし、何故かレオニードは吹き出す様な仕種を見せた。──おかしくてつい、とでも言う様に。
 これには意外さよりも怒りの方が先に来たエレンは、当然の様に抗議した。
「ちょっと何よ、何でそこで笑うのよ!?」
「いや……昔お前と似た様な事を言った者がいてな、それを思い出しただけだ」それから、また少しだけ口を閉じた。「……だから、人間は面白い」
「……それで、どうなの? 教えてくれるの?」半ば呆れながら、エレンは聞いた。
 しかし顔を上げたレオニードは、既に“あの”意味有りげな笑みを浮かべていた。
「残念だが、今すぐには無理だ──今言った理由でな。今はまだ時期では無い。だがお前が私が認められる程に強くなれば、全てを教えてやろう」
「まさか、またその“封印”をするつもり?」
 固い声で身構えるエレンに、レオニードは首を振った。
「無理だ。これ以上封印を重ねるのは危険だ。お前に壊れられては困ると言うのに、その為に壊してしまっては意味が無いからな。お前はまだ、これからの為に必要だからな」
「え?」
 最後の言葉の意味を計りかね、エレンはレオニードを凝視した。しかしレオニードはあの笑みを浮かべるだけだった。そして、
「どうせお前は旅に出る事になる。だから、今はゆっくり休むがいい。お前がここにいる限り、私は誰にも手を出さない」
 とだけ言い残し、猫を抱え溶ける様に闇に消えた。
 エレンは、しばらくそこに立ち尽くしていた。

 …………

 それから一行は城に滞在している間、暇を持て余すだろう事を予測していたのだろう、レオニードに近くの洞窟での探索を勧められて覗いて来たり、物見遊山気分でポドールイの街を散策したりする等して時間を潰した。エレン自身にしてみてもいつかのおつかい以来のポドールイだったので、その時世話になった女性の所へ顔を出したりもした。
 しかし、エレンの頭の中では常に奇妙な記憶の空白とレオニードとの関係がぐるぐると巡っていた。だが“封印を解いてもそれに耐えられないだろう”と言うセリフが引っ掛かって、誰かに聞こうと言う気にもなれずにいた。“考え込むエレン”と言う普段からは考えられないその姿に、トーマスやサラからは心配されたが、エレンはただ“何でもない”と返すだけだった。
 やがて1週間が過ぎた頃、待望のロアーヌからの使者が“ゴドウィン男爵軍撃破”の知らせを持って現れ、エレン達はモニカと共にロアーヌ城へ向かう事になった。そして城に着くなりモニカは侍女達にかしずかれて城の奥へと消えて行き、エレン達は大広間の方に通された。そこには見覚えのある背の高い褐色の肌の男が立っていた。ハリードだ。
 やがてファンファーレが鳴り響き、正装姿のミカエルとモニカが現れる。そして玉座に腰掛けたところで、おもむろにミカエルは口を開いた。
「……ゴドウィンの反乱等、この難局を乗り切る事が出来たのも、多くの者達のおかげである。特にハリード、トーマス、ユリアン、エレン、サラ、お前達は私の家臣でも無いのによく働いてくれた。礼を言うぞ」
 ミカエルのその言葉に続いて、今度はモニカが前に歩み出てエレン達1人1人に言葉を掛けた。
「ハリード様、有難う御座います」
「金の為だ、別に感謝してもらう必要は無いぜ」
 この様な場であっても、ハリードは金さえ貰えれば他はどうでもいいとの姿勢を崩さなかった。
「トーマス様、有難う御座います」
「勿体無いお言葉です」
 慇懃にトーマスは頭を下げた。
「ユリアン様、有難う御座います」
「自分が正しいと思う事をやれって親父がいつも……別に、そんな……」
 モニカが現れてから鼻の下を伸ばしっぱなしだった事もあって、声を掛けられたユリアンは完全にしどろもどろになって言った。
「エレン様、有難う御座います」
「モニカ様と旅をしたの、結構楽しかったよ」
 ポドールイを離れてからすっかりいつも通りに戻ったエレンは、本来の調子のままで答えた。
「サラ様、有難う御座います」
「……いえ……」
 人前に出る事に慣れていない以前に、場の雰囲気に圧倒されていたサラは、それだけ言うのが精一杯だった。
「カタリナ、有難う」
「モニカ様の勇気が、ゴドウィンの野望を打ち砕いたのですよ」
 カタリナと呼ばれた淡い色合いの美しい髪を結い上げた凛々しい顔立の美女は、妹の成長を見守る姉の様な笑みを綻ばせながら言った。
 そうしてモニカが礼を言い終えた処でミカエルはエレン達に恩賞を与える旨を伝え、更に数日間城内に滞在する許しを与えた。
 夜には祝賀の宴が行なわれた。宴が始まるなり、エレン達は事件の一部始終を聞きたがる貴族達に囲まれた。しかしエレンはマイペースにそれをあしらうハリードや慇懃さを崩さないトーマス、緊張しながらも舞い上がっているユリアンで十分に対応出来るだろうと考え、隙を見てグラスを片手に──疲れているのかぐったりしているサラを連れて行く事も忘れずに──中庭に出た。
「流石に何度も同じ話をさせられると疲れるね。大丈夫、サラ?」
「うん、少し頭がぼーっとする……」
「やっぱ慣れない事ばっかで疲れが溜まってるもんね。先に部屋に戻らせてもらおうか?」
 しかしそうは問屋がおろさなかった。2人を呼ぶ声が嫌でもエレンの耳に入る。
「エレン様、サラ様」
 心の中で舌打ちしながらエレンが声の方を見ると、モニカと先程の長い髪の美女がエレンとサラの方へ歩いて来るのが目に入った。
 ──参ったなあ……
 しかし無視する訳にもいかず、仕方無くエレンはそれに応じた。「何でしょう?」
「お姿が見えませんでしたのでどちらへ行かれたかと……」嬉しそうな笑みを浮かべながらモニカは言った。「紹介したい人がいますの。私の侍女の、カタリナですわ」
「初めまして、カタリナ・ラウランと申します」長い髪の美女、カタリナはそう言って一礼した。「カタリナとお呼び下さいませ」
 そしてカタリナが右手を差し出したので、エレンはそれを握り返した。
「エレン・カーソンです。こちらは妹のサラ」
 続いてカタリナはサラとも握手を交わし、それから再び口を開いた。
「モニカ様を御護り下さりまして、私からもお礼を申し上げますわ。本当に有難う御座いました」
「お礼なんて、そんな」深々と頭を下げるカタリナに、逆にエレンは恐縮して言った。「たまたまあの時その場にいたからってなりゆきで護衛した様なものだったし……」
「いえ、今回モニカ様をミカエル様の元へ送り出したのは賭けでした」カタリナはエレンの言葉に首を振った。「本来ならば私が行くべきだったのでしょうが、今回の場合モニカ様が城に残るのはわざわざ敵の手中に嵌る様なものだったので、そうしたのです」
「そうだったんですか……」
 裏の事情を知って、エレンは何故、よりにもよって一国の姫君である筈のモニカが単身馬を飛ばしてまで来た理由に納得した。詰まる所、敵は内部に存在していたのだ。
「──処でエレン様、実はお兄様がエレン様にお話したい事があると言っておりますの。それで、カタリナと一緒に行って戴けませんか?」
 唐突に話を変えたモニカの言葉に、エレンは首を傾げた。
「ミカエル様が? 私に?」
「ええ」モニカは頷いた。
「でも、サラが……」
「心配なさらないで下さいませ」躊躇うエレンにモニカは言った。「出来ればサラ様には、その間私のお相手をして欲しいのですが? シノンの事とか、色々聞かせて欲しいのです。もしお体がすぐれないのでしたら、他の部屋を御用意致しますわ」
 最大限の気遣いのつもりなのだろう、それとも何か狙いがあるのか、しかしそこまでされて行かないのも不味い。だがそれでもエレンはまずサラに聞いた。
「どうする? 大丈夫?」
「……うん、人の少ない所なら……」
 エレンは息を吐き出すと頷いた。
「分かりました、サラをお願いします」
「ではエレン様、こちらへ」
 カタリナが宴の行われている広間とは全く違う方向を指し示す。その場にサラとモニカを残してエレンはカタリナに付いて行くと、中庭を抜けて池の傍にある離れに案内された。そこにミカエルはいた。
「ミカエル様、エレン様をお連れ致しました」
 ミカエルは頷くと、流石に領主相手に畏まり片膝を着くエレンに向かって言った。
「この度はよく働いてくれた。モニカやハリードからもお前の事は聞いている。改めて礼を言おう。……処で、ステルバート・カーソンと言う名に、聞き覚えは無いか?」
 エレンは思わずミカエルを凝視した。それはあの、エレンが非常によく懐いていたあの叔父の名前だった。それが何故、この領主の口から出て来るのか?
「──どうして、私の叔父の名前を知っているのですか?」
 しかしミカエルは納得した様に頷いた。
「やはり知らなかった様だな」
「無理もありませんわ、あの方がお亡くなりになられた時、エレン様はまだ幼かったのですから」
 更にカタリナの言葉をも聞き咎める。エレンの脳裏にレオニード城での悪夢が甦った。
「叔父が死んだ理由を知ってるんですか?」
「これは異な事を聞くな。まあよい、本題に入ろう」
 問いに答える事無く、ミカエルは話題を変えた。
「ステルバート殿は生前、よくこの城に出入りしていた。そして様々な見知らぬ土地の話をしてくれた。私もよく彼の話に聞き入ったものだ。
 だが、ステルバート殿のこの城での用事はそれだけではなかった。ステルバート殿は冒険者として各地を巡る傍ら、このロアーヌの為に情報収集も行っていた。実はそれこそが、本当の用事だったのだ」
 エレンは再び驚いた。あの叔父がその様な事をしていたなど、聞いた事も無かったからだ。それは性質上家族にも話さなかっただけなのか、それとも知らずに済むのならそれでいいとでも思っていたのか。
 ミカエルの話は続く。
「そしてお前の事は、ステルバート殿の話によく上っていた。その話振りからお前に期待している事がよく分かった。そして今回の事で、お前の実力がどれ程のものかも分かった。──どうだ、その力、今後ロアーヌの為に使ってはくれぬか?」
「────!」
 思わぬ申し出に、エレンは息を呑んだ。
「……それは、私に叔父と同じ事をしろと?」
「そうだ」
「…………」
 ──どうしよう?
 頷くミカエルを見て、エレンは想像以上に自分が高く評価されている事を知った。予想外の展開に、考え込む。
 確かに、エレンの中にも自分の実力を試したいと言う気持ちはあった。冒険家の叔父に憧れたからこそ、外の世界への好奇心は強かった。わざわざこの様な場所で話を持ち掛けてきたと言う事は表立った行動を取れない様な類のものだろうが、それでもやってみたいという想いが沸き上がる。しかし。
 にも拘らず、それ以上に、サラを守って行きたいと言う気持ちの方が強かった。エレンにとってのサラはまだまだ放っておけない存在、あらゆる危険や問題を排除して守らなければならない存在だった。例えどれだけ迷ったとしても、結局エレンの世界はサラを中心に回っているのだから。
 エレンは、改めて真っ直ぐにミカエルを見た。
「申し訳ありませんが、お受けする訳には参りません」
「何故だ?」意外そうな顔をしながら、ミカエルは同時に興味を持って聞いた。
「私には妹がおります。私は、妹の事を出来る限り傍で守っていきたいのです」
「だが、何れはお前から離れる時が来るのだぞ。それでもか?」
「その時は──」エレンは一瞬、言葉に詰まった。「──その時は、妹の傍にいる誰かにその役目を譲るまでです。私はそれまで、妹の事を守っていたい」
 それを聞いて、ミカエルは少し長めのため息をついた。
「……そうか、ならば仕方あるまい。無理強いはせぬが、気が変わったらいつでも来るが良い」
 ミカエルが頷いたのを合図に、エレンは再びカタリナに連れられて退出した。

 …………

 ロアーヌを離れる日、エレンはトーマス、ユリアン、サラと城下町のパブで待ち合わせた。
 共に城を出なかったのはトーマスは丁度ロアーヌに用があって来ていた彼の祖父に、ユリアンはミカエルにそれぞれ呼び出されたからである。サラが先にパブへ行って待つと言った事から、エレンは1人、時間まで武器や防具を見て回る事にした。そして時間になり、パブに入ると、既にトーマスもユリアンもそこに来ていた。
「何だ、もう来てたの?」
「遅かったな、エレン」
「そっちが早かっただけじゃない、あたしは時間通りだよ」
 トーマスがエレンに向かって手を振る。既に腰を浮かしかけていたユリアンが思い切った様に立ち上がるが、しかし言いにくそうに口を開いた。
「エレン、その、実は、オレ……」
「何よかしこまっちゃって。何かあったの?」
 3人のいるテーブルへ向かいながらエレンは聞く。ユリアンは覚悟を決めたのか、一気に言った。
「実はオレ、今度新しく出来るモニカ様の護衛隊に入る事になったんだ。だから、一緒に帰れない」
 それを聞いて、エレンは宴の夜の事を思い出した。ミカエルが何を考えているかは分からないが、とにかく即戦力として使える人材を求めているのは間違い無さそうだった。それも表向き用のだけで無く、裏側に至るまでを。そしてユリアンは表向きの人材として、エレンは叔父との事もあって裏向きの要員として確保するつもりだったのだろう。
 ──おじさんも、そう思ったから誰にも言わなかったのかなぁ。
 見えない所での活動を要求される以上、迂闊に周囲に洩らす訳にはいかない。エレン自身もはっきりと口止めされた訳では無いが、例えこの幼馴染み達であっても、自分も声を掛けられたとは言えない事を分かっていた。
 なので、エレンがユリアンに掛ける言葉は素直な応援だけだった。
「良かったじゃない。あんたに城仕えが似合うとはとても思えないけど、ミカエル様やモニカ様の期待を裏切らない様にしなさいよ」
 だがユリアンは全く違う反応を想像していたらしい。拍子抜けした様に口を開ける。
「そ……それだけ?」
「それだけって、他に何かある?」
「だってオレ、ここに残るんだよ。今までの様には会えなくなるんだぜ?」
「だから何?」きっぱりとエレンは言った。「あんたあたしに何を期待してるワケ? 友達として喜ぶだけじゃ不満なの?」
「そのくらいにしてやれ、エレン」
 いつも通り遣り込められてしまっているユリアンに助け舟を出すかの様に、苦笑いしながらトーマスが言った。「それに、そろそろ行かないと不味いんじゃないか? ユリアンも」
「ああ、うん」
 それでもユリアンは名残り惜しそうにエレンを見たが、エレンはしれっと手を振るだけだった。
「じゃあね、がんばりなさいよ」
「……ああ、エレンも、元気で……」
 そうしてユリアンは肩を落としながらも、時間を気にしてか慌ただしく出て行った。
「まったく、大抜擢されたんだから少しはしゃっきりすればいいのに」
「エレンの事が諦め切れないからだろ」
「だからあたしはその気にはなれないって」
 ユリアンはそれはもう小さい頃からエレンが好きだと言って憚らなかった。しかしそういった事に全く興味が無いエレンにとってそれはただの重荷でしかなかったのだ。
「とにかく、あたしらもそろそろ行こうか?」
「いや、それなんだが……」今度はトーマスが口籠る番だった。
「何、今度はトーマス?」
「実は、俺もおじい様の言い付けで、ピドナへ行く事になったんだ」
 ピドナはここロアーヌとはヨルド海を挟んだ向こう側にあるメッサーナ王国の首都で、それこそ魔王の誕生以前から、メッサーナ地方だけでなくこの世界の中心として賑わっている。そもそもトーマスの家はピドナで商売を営んでいたが、トーマス言う所のおじい様が本家から分かれてシノンにやってきたという経緯がある。つまりトーマスは、分家と言えども跡継ぎである以上、広い世界で経験を積んで来いと言われた訳だった。
「なるほどね」エレンは頷いた。「まあ、いずれはそうなると思ってたけど、ずいぶんついでっぽくない?」
「いい機会だと思ったんだろ」苦笑しながらトーマスは言った。「……それでなんだが、実はこの話をしたら、サラも行きたいって言ってるんだ」
 ──はい?
 エレンは思わず耳を疑った。そして反射的にサラを見る。サラは思いつめた様な顔で、哀願した。
「お願いお姉ちゃん、私もピドナに行ってみたいの!」
「何言ってんの、あんたは?」しかしエレンは厳しい口調で言った。「行ってみたいって、トーマスは勉強に行くんだよ? それをついでに連れってって貰った所で、目的も無しに行ったんじゃ邪魔になるだけでしょう」
「そんなコト……」エレンの言葉にサラも一瞬怯んだが、瞳を潤ませつつも更に言い募った。「そんなコトないよ。私だって、お姉ちゃんがいなくたって、1人で何でもできるわ!」
「──1人で?」
 そこだけを低い声でエレンは繰り返す。真っ直ぐに自分を見据えるその目がそれまでのものと全く変わった事に気付いて、サラは思わず身を硬くした。
 それは、他の誰でも無い“サラ”が“エレンに対して”最も言ってはいけない言葉だった。
「……ああ、そう。あたしの知らない間に知らない所で随分と大人になったワケだ」低く、絞り出す様にエレンは言った。「1人で何でも出来るって言うんなら、1人で何処にでも行けばいいわ!」
 エレンはテーブルを殴りつけると、そのままパブを飛び出した。


 ──“1人で何でもできる”、だって!?
 パブの中から呼び止める声にも耳を貸さず、エレンはそのまま町の中を全速力で駆けた。
 それは、エレンにとってそれまでの自分の全てを否定された様なものだった。それを言ったのが他の誰かだったならまだ良かった。しかしよりにもよって自らが全てをかけてきた相手に言われてしまったのだ。
 あの晩、ミカエルに言った事は嘘偽りの無い本心だった。どれ程頼りない子馬も成長すれば自ら大地を駆けて行く様に、いつかはサラが自分の元を離れて行く日が来る事を頭の中では分かってはいた。しかしこの様な形で妹が自分から離れて行く事になるとは、エレンは思いもしなかった。
 ──それじゃあたしは一体なんだったのよ!
 すれ違う人々にぶつかるのも気にせず走る。止まったら最後、泣いてしまいそうだった。しかし、泣く事はエレンのプライドが許さなかった。だから走った。
「エレン!」
 誰かがエレンを呼んだ。しかしエレンはそれも無視した。知り合いなら尚更、今の自分を見られたくなかった。
 処が声の主は放っておくつもりが無かったらしい。伸びて来た腕はエレンの肩を掴んだ。エレンはその手を振り払うと、相手を睨み付けた。
「うるさいわね、ほっといてよ!」
「随分と御機嫌ナナメの様だな」声の主は、ハリードだった。「他の連中とパブにいたんじゃなかったのか?」
 ニヤニヤ笑いを浮かべるその顔に、エレンは思わず殴り倒してやりたくなった。
「あたしが何処にいようとあたしの勝手でしょう! いちいちうるさいオヤジだわねっ」
 殴る代わりに声を荒らげる。エレンもあたり散らしているだけなのは分かっていたが、それでも止められなかった。
「そう怒るなよ、シワが増えるぜ」
 だがハリードはしれっとして流すだけだった。無神経とも思えるハリードのセリフに、エレンは改めて無視して立ち去ろうとしたが、ハリードは再びその肩を掴んで引き止めた。
「待てよ。何処へ行くつもりなんだ?」
「シノンに帰るに決まってるじゃない」もう1度振り払いながらエレンは言い切った。「農場の事もあるのに、いつまでも遊んでなんかいられないわよ」
「俺は北へ行くんだ」人の話を聞いているのかいないのか、聞かれもしない事をハリードは言った。「丁度いい、お前も来い。お前の様なのは田舎に引き蘢るより外の世界で暴れ回る方が似合ってるぞ」
「どういう意味よ!」
「そういう意味だ。行くぞ」
 そう言ってハリードがエレンの腕を掴んで外へと続く門へと歩き出すので、エレンは突き飛ばしてその手を振りほどいた。
「だからほっといてって言ってるじゃない! 何であたしがあんたなんかと一緒に行かなきゃならないのよ!」
「こうでもしなけりゃ、お前は自分を潰して周りに合わせるだけだろう?」
「……あんたなんかに、何が分かるって言うのよ」
 ハリードを睨み付けながらエレンは言う。しかしそこに先程までの勢いは無かった。
 これまでもエレンの中では外の世界への興味は膨らむばかりで、決してしぼむ事は無かった。しかしエレンは自分が我を通す訳には行かない事も知っていた。母親からは母親が過去にそうした様に、1度は世界を見てくるといいと言われてはいたが、やっと軌道に乗って来た農場を、それもこれからが忙しい春だと言うのに放り出しては行けなかった。サラがいなくなるのならば、尚更だ。
 どれだけの間、睨み合っただろうか。実際には大した時間では無かったかもしれない。それは再びエレンを呼ぶ声で中断された。トーマスだった。
「おう、こっちだ!」
 その声を聞きつけたハリードが手を振ってトーマスを呼び掛ける。……エレンにとって、それは余計な事であったが。しかし肌の色も服装も道行く人々とは全く違っている所為でよく目立つ為に、目の悪いトーマスでもすぐハリードに気が付いて駆け寄って来た事で、エレンはその場を離れるタイミングを失った。
「おじい様から……」肩で息をしながら、トーマスは話す。「おじい様から、アリステアおばさんの手紙を預かってたんだ。……これを」
 トーマスはその手に持っていたアリステアの──エレンとサラの母親からの手紙をエレンに差し出した。エレンは訝りながらそれを受け取り、読んだ。それは、“術士の家系に生まれた者の務めとして”この機会に世界を見て回って来いと言う内容だった。
 ──何だか、こっちまでついでに送り出されたカンジだわね……
 何度も読み返しながら、思わずエレンは顔を顰める。この期に及んでまだ母は肉体派の娘に術士としての成長を期待しているらしい。むしろ“術を究めるまで帰って来るな”と言う無言の圧力を、エレンは感じた。
「何だ、いい大義名分が出来たじゃないか」横から覗き込んでハリードが言う。
「……サラが、あんな事を言い出した理由はこれもあったんだ」トーマスは説明した。「だから、エレンも」
「悪いな、こいつは俺が予約済みだ」トーマスのセリフを遮ってハリードは言う。「ツヴァイクを回ってランスへ行くんだ」
「誰が予約よ誰が」まだまだ睨み付けたまま、エレンは言う。「大体、あたしはまだ……」
「エレン、そうなのか?」
 今度はトーマスがエレンのセリフを遮って聞いたが、しかしエレンはそれには答えず、逆に聞き返した。
「……トーマスは? 本当にサラを連れてくつもり?」
「ああ……その手紙の事もあるし、取り立てて断る理由も無いしな」思案顔でトーマスは言った。「だから、本当はエレンも一緒に誘うつもりだったんだが、それじゃ仕方無いな」
「いいのか? 今ならこいつの気が変わるかも知れんぞ」
「だからあんたはあたしを何だと思ってるのよ!」
「……こんな時代だ、この先、何があるか分からないが……」どつき漫才の様な2人のやり取りを見て、トーマスはがっかりした様な寂しい様な顔をして言った。「また会おう、必ずな」
「トーマス……」
 そうしてトーマスが差し出した右手を、エレンは力強く握り返しながら言った。「キッザ〜〜〜ッ!」
「っ痛!!!」
 あまりの力にトーマスは声を上げる。エレンは見た目以上に力があり、とてもではないが並の男では適わない。そんな2人の様子を見て、ハリードはにやにや笑っていた。
「まあ、2度と会えないってワケじゃなし」エレンは握っていた手を放すと言った。「もしピドナに行く事があったら連絡するよ。どうせ親戚の所でしょ?」
「ああ」トーマスは頷いた。「じゃあ、そろそろ行かないと」
「サラを待たせっぱなしだし?」
「……まあな。とにかく2人共、元気で」
「おう、お前もな」
「じゃあねー!」
 手を振り立ち去るトーマスに、エレンも手を振り替えした。やがてその姿が見えなくなりエレンがその手を下ろした所で、ハリードは聞いた。
「本当に、これで良かったのか? 戻るなら今のうちだぞ」
「何よ、人の事強引に誘っといて、今更それは無いんじゃない?」拳を向けながら、エレンは言った。「もうこうなったらランスだろうと何だろうと一緒に行ってやろうじゃない。それとももう後悔してるの?」
「お前が踏ん切りが付いたのならそれでいい」ニヤリと笑ってハリードは言った。「さあ、行くぞ」
 そしてハリードは再び門に向かって歩き出した。エレンもそれに付いて歩き出しかけたが、ふと、あの夜のレオニードの言葉を思い出した。
“どうせお前は旅に出る事になる。……”
 ──まさか、母さんを知ってる?
 顔を合わせる事なく外の世界へ送り出す母の手紙。それを予言するかの様なレオニードのあのセリフ。レオニードが約束した相手が誰かは分からないが、それがもし、母アリステアだったとしたら?
「どうした?」
 付いて来ないエレンを振り返りながらハリードは言ったが、しかしエレンは首を横に振った。
「……何でも無い」
 そして急いでハリードに追い付き、質問攻めにする。
「ねえ、ツヴァイクにはどうやって行くワケ? 陸? 海?」
「海だ。ミュルスから船に乗る」
「その先は?」
「キドランドからまた船でユーステルムに抜けてだな……」

 …………

 ミュルスを発ったその日、船の傍をイルカの群れが通って行った。航海初日に見るイルカの群れは、幸運の印だと船乗りの間では言われていると言う。
 幸運の印が去って行った海を眺めながら、エレンは考えた。──ランスに行くまではいい。だがその後、自分は何をしたいのか?
 半ば成り行き、半ば母親の思惑に乗せられて旅に出る事になった訳だが、エレン自身にこれといった目標は無い。アリステアとしてはエレンが適性を持つ白虎の術ぐらいは極めて来て欲しいのだろうが、この様な形で放り出されたにも拘らず、やはりエレンは術を覚えようと言う気になれなかった。いっそ最初は旅行者として、そして何れはステルバートの様に“冒険家として”各地を巡るのもいいかもしれない。
 とりあえずはハリードに付いて、ランスを目指せばいい。エレンはそう思った。悩むのはそれからでもいいと。

 聖王暦316年、春の始めの事だった。
end
よんだよ


 Romancing SaGa3あとがき?

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