006.夢、幻


“in the daydream〜open the gate〜”

 あれは誰かが見せた夢だったのか。
 崩壊する地獄から、一か八か、媒介となる石も無しにゲートの術を使って脱出を試みた俺達が次の瞬間立っていたのは、宙に浮かぶ大樹の見える丘だった。

 …………

 そこは頭の中でイメージした物事が現実になるリージョンだった。但し曖昧なイメージでは実現されず、例え現実のものとなってもイメージしたものから懸け離れた形になる事が殆どだったが。
 だが明確なイメージさえあればそれが実現してしまう事は、時に悪夢を齎す。その最たるものが、死んだ奴等を復活させてしまった事だろう。──エスカデを、数多の珠魅《じゅみ》を、そして知恵のドラゴンを。
 結果として、俺達はそこで“英雄”と呼ばれる事となった。だが俺達は、そんな事を望んではいなかった。ただ帰りたかっただけなのだ──自分達の知るリージョンに。自分達が本来属するリージョンに。
 確かに、未知のリージョンとは言え移動する事が出来たのは幸いだった。もしかすると何処でも無い混沌の海に放り出されて死んでいたかもしれなかったからだ。そんな幸運とも言うべき状況においても尚──いや、幸運にも命があったからこそ、尚更帰りたかったのだ。むしろ帰らねばならなかった。キングダムの歪みを正し、裏の更に裏で行われた事を暴いてやらねば俺の気が済まなかったからだ。
 だが帰る前に、俺達にはしなければならない事があった。それはそのリージョンに出た時から姿の見えなかったメイレンと、それを追う様に宙に掻き消えたクーンを捜す事だった。
 クーンについては、俺達が死んでしまった連中を復活させると共に現れた魔道士によって送り込まれた迷宮で、その身柄を確保する事が出来た。そしてその時クーンが持っていた奇妙な剣を使って宙に浮かぶ大樹へと移動し、そこでメイレンも見付け出す事が出来た。
 但しメイレンはすんなりと助け出す事は出来なかった。半ば大樹に取り込まれていたからだ。そうしてこの世界の支配者とも言えるマナの女神とやらを倒す事でメイレンは解放され、俺達は元のリージョンに──廃虚と化したマジックキングダムに帰る事が出来たのだ。

 1度壊滅したリージョンを再び元の状態に戻すのは容易では無い。俺はそもそもの目的の為にまず裏学院の存在を表に晒した。そして更にその裏で行われていた事も、白日の下に晒し出した。溜まった膿は1つ残らず出してしまった方が、後腐れが無いからだ。
 結局いつの間にか俺がキングダムを動かすようになり、指導者として忙しい日々を送るようになった。時折リュートやエミリアが遊びに顔を出しに来るが、あの日々の事を何も言わない奴等に対して、ふと思ってしまうのだ。
 あれは誰かの見せた夢だったのではないのかと。
end
よんだよ


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 只今挑戦中あとがき?

 SaGa Frontierin the daydream

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