061.瞳を隠す
“every as the saying goes”
そろそろレストランの仕込みの時間だと言うルーファスが部屋を出るのと合わせて追い出され、エミリアとアニーはやはり表の仕事の時間に合わせて着替えに行くライザに改めて聞いてみる事にした。
「ねえライザ、結局、本当の所はどうなの?」
「あのゴーグルで実験をしているのは本当よ」
着替えながら、ライザは答えた。
「そしてグラディウスの開発部で、術を利用した機材の開発をしているのも本当。でもその内容はルーファスの言っていたのと違って、対術士用のものになっているわ」
「でも、実際にああいう事が出来無い訳じゃないよね? 特に魔術の資質持ちは、応用次第で結構色んな事が出来るって聞いたけど」
アニーが聞く。アニーは以前マジックキングダムの術士の依頼でディスペアを案内した事があり、その際に術士が透視の様な事をやっていたからだ。
しかしライザは首を振った。
「出来無い事は無いと思うけど、透視に関してはシルエットが分かる程度、それも今の段階では紙の箱でしか成功してないのよ。確かに術士だったら詳しく見る事も出来るかもしれないけど、人工的に再現するのは難しいわね」
「じゃあ、今は何をやっているの?」
「ルーファスを対象にした物は無いわ。せいぜい、任務中限定でデータを取っているぐらいね」
「え、何?」
「なになに?」
アニーは身を乗り出して、エミリアは目をきらきらさせてその内容に興味を示す。だがライザはにーっこりと笑うと、言った。
「それはまだヒ・ミ・ツ。いずれ分かるわよ……」
ふふっ、と笑うライザに、エミリアだけでなくアニーまでもが思わず引いた。否、むしろ子供向けムービーに出て来るマッドサイエンティストを思わせるその笑みに、得体のしれない恐怖を感じていた。
これはヤバイ。
“鉄の女”との異名を持ち、戦闘では合気道の達人として、そして任務が無い時はこの支部と表向きの姿であるレストラン双方の事務と経理を一手に引き受け、彼女がいなければクーロン支部は1日でその機能を停止するとまで言われるライザの新たな一面を、2人は垣間見た気がした。
──知らない方が良かったカモ……
心の中で、エミリアは心底そう思った。
──やっぱり、結構根に持ってた?
過去にライザとルーファスの間にあった出来事をそれとなく知っているアニーは、吹っ切れた様に見えて実はその影で虎視眈々と機会を伺っていたのだと思った。
そして2人が共通して思った事と言えば。
──触らぬ神に、祟りナシ。
だった。自分達にその矛先を向けられてはたまったものではない。
以後、2人が畏敬の念を持ってライザに接するようになったのは言うまでも無い。
end
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只今挑戦中/あとがき?
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