080.オリジナルライフ


“the point of no return”


 今度こそ接続が切られ、“彼”は“あの人”に付いて思考プログラムを走らせた。
 “彼”に残された彼の記憶によれば、現在のシステムの大幅な改編を目指しているらしかった。だが彼の目にはむしろ旧来のシステムの破壊と、新たなシステムの構築を目指している様に見えていた。そして彼はその自らの見解に基づいて“あの人”の依頼をこなしたのだった。
 “あの人”は知っているのだろうか──トリニティに所属しながらも、上層部の腐敗振りに幻滅している者達の一部から期待されている事に。
 勿論、その冷酷無比な手腕に不安を覚えない訳では無い。だがそれ以上に、今ここで変えなければトリニティという組織そのものが崩壊するのが目に見えているからこそ、それを変えようと──或いは作り替えてしまおうとする“あの人”に期待するのだ。
 言ってしまえば彼もまた、期待する者の1人だった。だから彼は“あの人”からの依頼に応じたのだ。“彼”を設計したのも勿論趣味的な理由が大半を占めてはいたが、彼が何処かで“あの人”の計画の行く末を見届けたいと思っていたからでもあった。……尤も、どれだけ本気で“彼”が必要な事態になると彼が考えていたのかは、“彼”の覚醒した状況からしても不明だったが。
 それでも“彼”の行動原理の1つとして「“あの人”の計画の進行を助ける」と言う目的を入れられているのは事実であった。T260Gの件にしてもその現れに過ぎない。“あの人”へと丸投げするよりは“彼”が動いて事態の推移を見た方が効率がいいと判断したからだ。
 ──さあ、早くおいでT260G君。君の事だから、僅かな時間も無駄にはしたくないだろう?
 トリニティのネットワーク上に文字通り網を張りながら、接触を待つ。全ては、そこから始まるのだから。
end
よんだよ


補足…例の三原則
 アシモフの提唱した「ロボット三原則」の事。
 「第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を見過ごす事によって、人間に危害を及ぼしてはならない」
 「第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。但し、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでは無い」
 「第三条 ロボットは、前掲第一条及び第二条に反する怖れの無い限り、自己を守らねばならない」
 つまりこの“彼”は第二条に基づいて“あの人”に応じている様に見えるものの、実際には彼=製作者の命令に従っている訳だ。


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 只今挑戦中あとがき?

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